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札幌高等裁判所 昭和63年(行コ)8号 判決 1990年4月18日

札幌市中央区北二十条西十五丁目一番七号

控訴人

柴田清造

札幌市中央区南十七条西九丁目一番二八号

控訴人

菅原三治郎

右両名訴訟代理人弁護士

小野寺彰

札幌市中央区北七条西二十五丁目

被控訴人

札幌西税務署長

山崎市司

右指定代理人

吉田徹

福永敏和

實金敏明

中村哲

四村庄一

斎藤昭

溝田幸一

佐藤隆樹

主文

本件各控訴を棄却する。

訴訟費用は控訴人らの負担とする。

事実

一  控訴人らは、「原判決中控訴人らの請求を棄却した部分を取り消す。被控訴人が控訴人柴田清造に対して昭和五七年九月一八日付でした同控訴人の昭和五六年分の所得税についての再更正処分のうち、総所得金額五四九万一二〇〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、右いずれも昭和五九年五月二八日月の裁決によつて一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。被控訴人が控訴人菅原三治郎に対して昭和五七年一一月一八日付でした同控訴人の昭和五六年分の所得税についての更正処分のうち、総所得金額一六六万四六〇〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、右いずれも昭和五九年五月二八日付の裁決によつて一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。訴訟費用は、第一、二審判とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張は、次のとおり附加するほかは原判決事実摘示中控訴人らに関する部分と同一である(ただし、本案前の主張及びこれに対する認否反論部分を除く。)から、これを引用する。

1  原判決一〇枚目表八行目の「経営にかかる」を「経営に係る」に改める。

2  同一三枚目中、裏三行目の「なぜならば」の次に「、令二八条の二の文理に則して解釈すると、同規定の「そのゴルフ場を一般の利用者に比して有利な条件で継続的に利用する権利を有する者」とは、そのゴルフ場のいわゆる会員の意味であり、従つて、法九条一項一一号ニの有価証券の譲渡による所得のうち非課税から除外される株式とは、『ゴルフ場の所有又は経営に係る法人の株式を所有することが、そのゴルフ場の会員となるための要件とされている場合におけるその株式』という意味になり、端的にいえば、そのゴルフ場の会員になるためには当該会社の株主となる外に方法がないという場合の株式だけが課税されるとの結論になるからであり」を加え、裏七行目に次に行を改めて、

「また、第七一回国会で高木文雄政府委員は、法九条一項一一号ニに関連し、ゴルフ場の会員の形態に大別して二つあり、一つは預託金会員制であり、他は株主会員であるが、それら以外の株主のうち一定の預託金を払つた者だけが会員となる混合形態があると説明している。混合形態というものは、株主である者に限つて一定の金員を払つて会員となれる方式であるから、結局は株主のみが会員になれるとの制度に包含されることとなる。この説明は、国民に公表された立法の趣旨として十分に尊重されなければならない。」を加え、裏一一行目の次に行を改めて

「(四) また、第一一三回通常国会において所得税法九条関係の有価証券の譲渡所得非課税原則が廃止されたが、株式形態のゴルフ会員権は、通常の株式等と異なる取扱いを受けた。更に、新たに消費税法が発足したが、株式形態のゴルフ会員権は、この消費税法においても譲渡が非課税とされる有価証券等から除外された。本件株式が令二八条の二に該当すると解釈するときは、本件株式の如きものの譲渡額の全部に証券取引税、株式の総合譲渡所得税、消費税の三税が課税され、著しく不利益課税となりその不合理性は甚だしく、憲法一四条の保障する法の下の平等に反する。

(五) 更に、本件のごとき事例に課税するためには委任命令である令二八条の二の規定を変更する必要があり、したがつてその変更もしないまま課税を強行することは租税法律主義を規定した憲法三〇条、八四条に違反するというべきである。」を加える。

3  同一五枚目裏二行目の「及び同(三)の主張」を「、(三)ないし(五)の各主張」に改める。

三  証拠関係は、原審記録中の書証目録及び証人等目録並びに当審記録中の書証目録記載のとおりであるから、これらを引用する。

理由

一  当裁判所もまた、控訴人らの本訴請求は失当であつて棄却すべきものと判断するが、その理由は次のとおり加除訂正するほか原判決の理由四の説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決三六枚目中、裏六行目の「第一ないし第六事件の」を「控訴人らに対する」に改め、裏七行目の「第一ないし」及び「各」を削り、裏八行目の「第六事件請求原因1ないし4」を削り、裏一〇行目及び裏一三行目の「被告ら」を「被控訴人」に改める。

2  同三七枚目中、表三行目の「第一及び第六事件」から表四行目の「札幌西税務署長」まで及び表六行目の「第一及び第六事件」から表七行目の「札幌西税務署長」までを、それぞれ、「第四事件及び第五事件についての被控訴人」に改め、表八行目の「(二)の事実」を「(二)の各事実」に改め、表九行目から一〇行目にかけての「は、いずれも」から表一二行目の「結果によれば」までを削り、裏三行目の「が認められ」から裏一三行目の「ことはできない。」までを「は、当事者間に争いがない。に改め、裏一四行面の「前掲乙イ第二六号証、」を削る。

3  同三八枚目中、表一行目から表二行目にかけての「第二五号証、第二七ないし」を「第二五号証ないし」に改め、表五行目の「によれば」を「に前記当時者間に争いがない事実及び弁論の全趣旨を総合すれば」に改める。

4  同三九枚目中、表六行目の「得喪」の次に「及び停止除名」を加え、裏一一行目から一二行目にかけての「登載されるもの」を「登載されうる」に改める。

5  同四二行目中、表一〇行目の「規定については」の次に「、右規定に委任した根拠法律である法九条一項一一号ニにおいて、『ゴルフ場その他の施設の利用に関する権利の譲渡に類するものとして政令で定める有価証券の譲渡による所得』と規定されていることとも対比すれば、その適用の有無は、もつぱら株式又は出資を所有することにより当該会員権が取得されるか否かの点のみに係り、当該ゴルフクラブに他に預託会員があるか否かは問うところでないと解され」を加え、同行目の「文理上」の次に「からも」を加え、裏四行目の「付言するに」を「右規定の立法趣旨の点について更に敷延すれば」に改め、裏一三行目の「ものである」から「争いがない。」までを「ものと解するのが相当であり、複合形態にあつては、株主でありながらいまだ預託金を預託しないためゴルフ会員権を取得していない者の有する株式の譲渡についても課税されることとされたものである。」に改める。

6  同四三枚目中、表八行目の次に行を改めて、

「(4) 本件株式の譲渡に課税することの違憲性の有無

控訴人らは、有価証券の譲渡所得非課税原則が廃止され、消費税法が施行された後に、本件株式が令二八条の二に該当すると解釈するきは、著しい不利益課税がされることとなり、甚だしく不合理であつて、憲法一四条の保障する法の下の平等に反する、と主張する。しかしながら、本件株式は、令二八条の二に該当すると判断されても、関係税法の改正の前後を通じて課税上受ける扱いにおいて通常の株主会員権の場合と何ら選ぶところがないが、その通常の株主会員権に係る課税に対する立法府の判断が法の下の平等に反する疑いのあることを示す資料は全くなく、右の主張はとうてい採用できない。

控訴人らは、また、本件のごとき事例に課税するためには委任命令である令二八条の二の規定を変更する必要があり、したがつてその変更をしないまま課税することは租税法律主義を規定した憲法三〇条、八四条に違反する、とも主張する。しかしながら、前述のとおり、本件株式の譲渡所得は、明らかに法九条一項一一号二及び令二八条の二に該当し、令二八条の二の規定を変更する必要はないから、右の主張も採用できない。」を加える。

7  同四四枚目裏一二行目の「また」の次に「、株主会員のみによつて構成されているゴルフ場の株式の価額を評価する場合にもその会社の資産及び経営権を評価する部分とゴルフ場の優先的使用権を評価する部分とに分けることが十分可能であるにもかかわらず、法九条一項一一号二及び令二八条の二がその二つを分けないで全体に課税する建前を採用していることは明らかであり、この株主会員権の場合との権衡からも、本件株式の譲渡益につき令二八条の二の規定の適用に関して通常の場合と別異に解すべき理由はないものといわなければならない。更に」を加える。

二  よつて原判決中控訴人らの請求を棄却した部分は相当であり、本件各控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 近藤浩武 裁判官 竹江禎子 裁判官 成田喜達)

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